応答曲面法
応答曲面法とは何ですか?
応答曲面法(RSM)は、製品や工程の開発、改善、または最適化に用いられます。この方法論は、実験領域全体にわたる応答の形状を調べてモデル化するための、さまざまな統計的、グラフィカル、数学的手法の集合から構成されます。
応答曲面法はいつ使用すべきですか?
製品の品質や工程の結果を決定する上で重要な因子を特定するために、スクリーニング計画を使用します。RSMは、重要な因子を特定した後、応答を最適化する因子設定を決定するのに役立ちます。具体的には、RSMは次のような場合に役立ちます。
- 応答に一般的な目標がある場合(例:高いほど良い、低いほど良い、または範囲内が望ましい)。
- 応答に対する具体的な目標がある場合(例:反応率が少なくとも90%、5mg/L未満、または20 ± 0.1mmであること)。
- 複数の応答があり、それぞれに異なる目標を持つ場合。
さらに、RSMは、実験領域に最適値が存在すると確信できる場合に最も役立ちます。
応答曲面法を使用する理由
スクリーニング計画を使用して、工程で重要な可能性のある因子のリストを絞り込んだと仮定しましょう。ここで、1つまたは複数の応答を最適化するための因子設定を調べたいと考えていますが、通常のスクリーニング実験で得られる情報よりもより詳細な情報が必要となります。
もしかすると、どの因子が重要かはすでに分かっていて、目標をより良く達成するために工程を改善できると考えているかもしれません。いずれの場合も、応答の形状(応答曲面)を理解しておくと、どのような目標があっても(最大値、最小値、目標値)、最適な応答が得られると予測される因子設定を特定するのに役立ちます。
ここでは、検討しているすべての因子が連続因子であると仮定します。
2つの水準で実験された実験因子は、線形効果を推定するために必須なデータを提供します。単一因子実験の場合、応答曲面は直線としてモデル化されます。2因子の場合、曲面は平面としてモデル化され、3因子以上の場合、曲面は超平面としてモデル化されます。
しかし、多くの場合、因子が応答に及ぼす影響は線形ではありません。因子の低水準と高水準の間の応答には、ピーク(最大値)または谷(最小値)が存在する可能性があります。言い換えると、応答曲面に曲線性(曲率)が見られる可能性があります。そのような場合、線形応答を仮定した計画では、最適な条件を見つけることが困難であるか、不可能です。応答の曲率を推定するには、より多くのデータ点を必要とするモデルに新しい効果を追加する必要があります。たとえば、2次効果(つまり、X2)を推定するには、連続因子を2水準ではなく、3水準で評価する必要があります。RSM実験には、実験の各連続因子に対して3つ目の水準(またはそれ以上)が含まれます。
これらの計画は単独の実験として実施できますが、既存のデータを基に、以前の計画に含まれていなかった因子水準と処理の組み合わせを指定して2次効果を推定することもできます。重要な因子を見つけるためにスクリーニング実験を行ったと仮定します。システムや工程に関する貴重なデータはすでに収集されていますが、通常、曲率を推定するために必要なデータはないことが多いです。応答曲面を効率的にモデル化するには、連続因子の第3水準を含む実験で既存のデータを補完するのが効率的な方法です。
1つまたは複数の応答を最適化する因子設定を見つけるのは難しいことがあります。ほとんどの場合、応答は複数の因子に依存するため、応答曲面の形状は多次元になり、因子間に交互作用がある場合は複雑になる可能性があります。応答曲面法を用いることで、その曲面を探索し、実験領域内で応答目標を達成するための最適な因子設定を見つけることができます。
応答曲面法:例
工程を最適化するために、どの因子設定が最高の 収率 と最低の 不純物 を生み出すかを特定することに関心があるとしましょう。2つの応答目標に対し、重要度は同じであるとされています。過去の知識に基づいて、3つの因子が重要であることを理解していますが、目標を達成するために最適な運用条件を見つけることで工程を改善したいと考えています。この例では、上記のように前の計画を拡張するのではなく、新たにRSM計画を作成します。
応答および因子は次のとおりです。
- 収率(Yield):応答目標は最大化(高いほど良い)
- 不純物(Impurity):応答目標は最小化(低いほど良い)
- pH:因子範囲は5~8
- 温度(Temperature):因子範囲は摂氏15°〜45°
- ベンダー(Vendor):3つのベンダー(因子水準):良好(Good)、高速(Fast)、安価(Cheap)
連続因子である pH と 温度 の両方において、因子の高水準と低水準の間で応答にピークまたは谷があるかどうかを判断します。pHの関心範囲は5〜8です。pHが 収率 および 不純物 に与える影響が線形でないかどうかを理解するために、5と8の間の第3の中間水準(6.5)を評価します。また、温度についても、因子水準 15°、30°、45° で評価します。3つの水準により、連続因子の2次効果(曲率)を推定できます。カテゴリカル因子の2次効果は推定できません。また、この3つの因子間に2因子交互作用があるかどうかにも関心があります。18回の実験を伴うRSM計画により、主効果、2因子間の交互作用、および2次効果の推定が可能となります。
実験を実施した後、応答はデータテーブルに記録されます。
応答をモデル化するために、重回帰分析を使用します。両方の応答の完全モデルには、以下の項が含まれます。
- 切片
- 3つの主効果(pH、温度、ベンダー)
- 3つの2因子交互作用
- 連続因子に対する2つの2次効果
収率と 不純物 それぞれに対し、別々のモデルをあてはめた後、変数選択を用いて、モデルから有意でない項を削除できます。各応答の縮小モデルに残っている項を以下の表に示します。
注:斜体で示されたモデル項は有意ではありませんでしたが、より高次の項に関係しているため、モデルに残しています。
両方の応答に対して、pHと温度、およびそれらの1つ以上の高次項が重要であることがわかりました。しかし、ベンダー(および pH との交互作用)は、不純物に対してのみ重要でした。
連続因子の応答曲面の形状を3次元曲面プロットで視覚化できます。プロットで、実験領域のどの部分で 収率 が高く、不純物が低い値を得られるかを確認できます。
収益
不純物
また、断面(プロファイル)を用いて、応答曲面を視覚化することも可能です。ここでは、個々の因子の水準を変更することが応答の推定値にどのような影響を与えるかを確認できます(左側に表示)。また、交互作用に関係する因子のプロファイルが、他の因子の水準に応じてどのように変化するのかがわかります。
応答の目標は、収率 を最大化し、不純物を最小化することです。両方の目標のトレードオフのバランスを取るような因子設定の組み合わせを実験領域内で見つけることが可能です。この例では、pHを6.85、温度を34.25度に設定し、ベンダーに高速(Fast)を使用すると、収率が94.12%で最大化され、不純物が0.89%で最小化されると予測されています。
同様の結果を生み出す他の因子の組み合わせがある可能性があります。また、より高い 収率 を生成する設定を見つけることもできますが、その代わりに 不純物 の最小化は犠牲になります。あるいはその逆も同様です。一方の応答を最適化することが他方よりも重要であれば、そのトレードオフを受け入れることができるかもしれません。