慶應義塾大学薬学部・薬学研究科

医薬に携わる者に統計解析の知識は必須
学生の“その後”を見据え、求められるスキルをJMPで身につける

課題医薬に携わる者にとって、統計解析の知識は必須。統計解析初心者でも使いやすい統計解析ソフトが必要だった
ソリューション自身がJMPを利用していた経験から、使いやすい操作性と分かりやすい構造のJMPを授業に活用した
結果解析目的から手法を選択し、対話的に操作ができる。統計解析の思考順序に沿ってガイダンスする機能が好評

慶應義塾大学薬学部・薬学研究科は2008年、薬科大学として77年の実績を持つ共立薬科大学との合併により誕生した。現在、6年制薬学科に900名、4年制薬科学科に240名の学生が学んでいる。

一般に、薬学部の卒業生の多くは病院や薬局などに就職する。しかし、慶應義塾大学薬学部・薬学研究科の卒業生は、その半数以上が製薬企業はもとより、食品、化学、化粧品などの民間企業に就職する。そんな同学部で注力しているのが、統計解析に関する教育だ。1年次には必修科目の一般教養として、微分積分・統計(年間15コマ)を学び、さらに、3年次の必修基礎講義で生物統計「治験・バイオスタティスティクス」を学ぶ。同講義では、医薬品開発の全体的な流れを学ぶが、15コマのうち6コマを、統計解析理論に割いているという。

加えて、薬学科の6年次に選択できる「臨床薬物評価学」の授業では、実際にJMPを使って実践的な統計分析の手法を学ぶ。薬の開発史から臨床研究のための研究計画書の作成手法、そして最後は研究で取得したデータを基に、適切な解析結果を得るための統計解析手法を習得するのだ。

慶應義塾大学薬学部・薬学研究科で医薬品開発規制科学講座の漆原尚巳教授は、「治験を行う際には、研究計画を立案する時から統計解析の知識が必要になります。なぜなら研究目的に沿って設定された仮説を検証するためには、あらかじめ最も適切な解析方法が何かを考えながら、どのようなデータを収集し、そのデータをどのように処理するかを知っておく必要があるからです」と語る。薬剤師にとって、治験のスキルの必要性は高まっている。そこで、臨床研究の基礎となる知識を習得し、将来的に活用してもらうことが、統計解析実践の目的だという。   

薬学教育で統計学は必須   

現在、薬剤師を目指す学生はもちろん、医薬に携わる者にとって、統計解析の知識は必須だ。薬剤師になるための「薬剤師国家試験」には「生存時間分析」など、生物統計に関する出題があり、すべての薬学部で統計解析のカリキュラムが組まれている。しかし、実際にどこまで詳細に教えるかは各大学の裁量に委ねられているという。漆原教授は、「慶應義塾大学薬学部では、薬剤師国家試験対策を超えた、詳細なレベルまで教えています」と語る。その理由は、「将来、絶対に必要になる知識だからです」(漆原教授)。

1994年4月より研修認定薬剤師制度が設けられた。これは、薬剤師が一定期間内に研修を受け、研究論文を提出し、定められた単位を取得すれば、研修認定薬剤師に昇格でき、その後のキャリアアップや報酬アップにつながるというものだ。病院側も研修認定薬剤師を配置することで診療報酬が上がるため、積極的に雇用する機運が高まっている。

研修認定薬剤師制度の中には、研究・論文作成もあり、その基礎知識の一つとして、統計解析が必要となる。漆原教授は、「薬剤師コミュニティでは、積極的に医薬品情報を共有しています。例えば、複数の薬を投与したときの相互作用に関するデータは、医者も必要としている。そうした状況においては、データによって客観的に証明された科学的根拠(エビデンス)がある臨床研究の内容を、正確に伝えられるスキルが重要です。社会で求められるスキルと、常に成長していくための知識を与えるのは大学の務め。統計理論だけでなく、実践的な統計解析を理解するためにJMPでの実習を授業に取り入れているのです」と説明する。

ガイディングで学生に“気づき”を

漆原教授が授業でJMPを利用する理由は明快だ。かつて、自身がJMPを使った授業を受けており、その使いやすい操作性と分かりやすい構造を知っていたからである。また、すでに慶應義塾大学が大学全体で使用できるライセンスを持っていたので、講義ですぐに使えるという事情もあった。

解析目的から手法を選択し、対話的に操作ができる──。漆原教授はJMPをこう評価する。一般的な統計解析ソフトは、事前にどのような分析をするかを決める必要がある。例えば、ロジスティック回帰分析をする場合には、事前にデータを用意し、どのデータを独立変数(説明変数)と従属変数(目的変数)にするかを決めなければならない。しかし、解析初心者にとって、「事前に解析手法を十分に理解したうえで選択する」ことはハードルが高い。

これに対しJMPでは、最初に解析手法を決める必要がない。一方の変数を説明変数とし、他方の変数を目的変数とすると、ロジスティック回帰分析を行うのか、分散分析を行うのかをJMPが判断し、正しい方向に導いてくれる。つまり、「2つのデータについて、その関係性を見たい」という漠然とした要求に対して、その次の操作をガイディングしつつ、適切な分析手法を提案してくれるのだ。

例えば、JMPで二変量の関係を可視化する場合、その分析方法──単回帰・ロジスティック回帰・ANOVA・分割表など──がサポートされている。一変量の分布で連続量の変数を入れるとヒストグラムが表示され、さらに深掘して分析する方法をJMPのインターフェイスがガイドしてくれる。漆原教授は、「教育目的から考えると分かりやすく、生徒に説明がしやすいのがJMPのメリットですね」と、その優位性を語る。

一般的な統計解析ソフトの場合、指定した分析に適合しないデータを入力すれば、エラーになって、その先に進めない 。しかし、JMPはデータの尺度に応じた分析結果を表示し、まるで分析に対してアドバイスをしてくれるかのような構造になっている。いわば、「操作が簡単でガイディングしてくれる」ツールなのだ。同時に、学生に対しては「何が間違っているのか」の気づきを与える。最終目的は同じであっても、そこに至るまでのプロセスを統計解析の思考順序に沿って教えてくれるのだ。こうした設計思想の違いが、JMPが多くの教育機関で導入されているゆえんでもある。

また、サンプルデータが豊富なだけでなく、CSVやExcel形式など、他のデータソースからのインポートも、可能というメリットがある。データのクレンジング機能も用意されており、学生は分析前の準備に労力を割く必要がない。「学生はクイズを解くような感覚でJMPを使い、解析のハウツーを学んでいます」(漆原教授)とのことだ。

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「座学だけでは統計解析の知識は身につきません。頭で理解しても、実際にデータをさわってみないと実感として理解できない部分は多々あります」と、漆原教授は力説する。病院で仕事をしたり、産業界で医薬品開発の仕事をしたりするのであれば、実際に手を動かした経験は大きなアドバンテージになる。JMPがその一端を担っていることは、間違いない。

※ 本事例に記載の内容は2016年5月時点のものです


学生はクイズを解くような感覚でJMPを使い、解析のハウツーを学んでいます

 
漆原尚巳氏
慶應義塾大学薬学部・薬学研究科
医薬品開発規制科学講座 教授
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