芝浦工業大学

JMPを入り口に統計教育を
~先生の引き出しを作る取り組み~

チャレンジ教師を目指す学生が統計に触れる入り口となる新たな統計解析ソフトが必要だった
解決策すべての教職員および学生がJMP Proを使える環境を整備。使いこなすまでのハードルが低いため、ユーザに統計をより身近に感じてもらえる
結果さまざまなデータを利用する卒業研究や教職員によるアンケートの集計などの幅広い用途に活用できる。実践的な統計教育も行えるようになった

学校法人 芝浦工業大学は、2014年にJMPを導入。全教職員および学生がJMP Proを利用できる教育機関限定のライセンスを契約した。さまざまな研究で使われるJMPだが、教職課程の取り組みもユニークだ。中学校や高等学校の数学の授業で統計について教えることになる未来の教師のために、夏季集中講座を開催。約80人の学生と教職員がJMPと統計について学んだ。

引き出しの多い先生を育てたい

大きなかばんから折り紙を取り出し、1枚1枚を丁寧に配る。「2度だけ折って、1辺を3等分する場所を示してみてください(芳賀の定理)」。芝浦工業大学工学部 准教授 牧下 英世氏は、ペンを渡しながら、「自由に書き込んでいいですからね」と語りかける。ほどなく、答え合わせが始まる。折れ線や、折られた紙の跡に沿って現れた二等辺三角形から、折り紙の角に現れた三角形がエジプト三角形(3辺の比が3:4:5の直角三角形)であることを導き、2つの三角形の相似により、示された点が1辺を3等分したものであることを証明する。流れるような証明に、中学・高校で数学を学ぶ面白さが詰まっている。

「学生には、ドラえもんの四次元ポケットのような引き出しを持っておきなさい、と指導しています。問題を解ける先生は当たり前。生徒に数学への興味関心をもたせることができる先生を育てたいのです。折り紙も、そのきっかけになります」(牧下氏)

筑波大学附属駒場中学校・高等学校で、長く数学の教鞭を執ってきた牧下氏は、現在は、芝浦工業大学の教職課程において、教育実習、事前事後指導、教職実践演習、教職論、確率論、数理統計学などを幅広く指導しながら、数学科指導法を主に担当。教員免許の取得を目指す工学部、システム理工学部およびデザイン工学部の学生を育てている。

数学科指導法の講義は、実践的な模擬授業や、問題を解くプロセスを大切にする“教え方”など、多彩な内容になっている。もちろん、統計の内容もある。近年、国が統計教育に力を入れていることから、中学・高校で統計を教える機会は増加傾向にある。牧下氏は、実教出版の文部科学省高等学校数学科検定教科書 編集委員を務めており、指導要領の改訂など、最新情報を学生に伝えている。

牧下氏は、「中学1年で学ぶ『資料の活用』で、統計的な考え方を学びます。高校に入ると、必修科目の数学Ⅰには『データの分析』があり、相関係数をはじめとする記述統計の基礎を学ぶことになります。さらに数学Bの『統計的推測』の内容を学ぶことになります。これからの数学科の教師はこれら統計の内容を教えることになりますから、教職の学生には統計を学ぶ機会を持ってもらいたいと考えていました」と話す。

JMPと統計の特別講座を開講

その強力なツールになったのが、JMPだ。芝浦工業大学は、2014年にJMPを導入した。それまでは、他社製の統計解析ソフトを利用していたのだが、使いこなすまでのハードルが高く、だれもが使える優しいソフトではなかった。JMPなら、教師を目指す学生が統計に触れる入り口になってくれるかもしれない。そう考えた牧下氏は、「2014年度 芝浦工業大学FD・SD活動助成(教員が授業改善のために使う予算)」を受けて自身の授業の改善に取り組んでいる。その活動のひとつとして、数学科指導法の授業の中でJMPと統計についての特別講座を開くことにした。

講義時間は3時間。豊洲と大宮のキャンパスで各1回、夏季集中講座として実施。受講者は、合計約80人。対象は広く、教職課程の学生に加え、JMPに興味を持つ学生や教職員の受講もあった。講座の開講にあたり、SASのJMPジャパン事業部は全面的に協力し、テキストの作成や実際の講義までをサポート。牧下氏は、JMPのエンジニアと話し合いながら、講義の内容を詰めていったという。

「まずは、JMPというソフトを知ってもらうことに力を入れました。学生生活の中で、講座の内容を思い出しながらJMPを活用してもらえることはもちろん、将来教壇に立ったときに、引き出しのひとつになるはずですから」(牧下氏)

芝浦工業大学では、JMP Academic Suiteを契約し、すべての教職員および学生がJMP ProのWindows版とMacintosh版を利用できる。大学のwebサイトにアクセスすることができれば、個人のコンピュータにインストールすることも可能だ。そのため、さまざまなデータを利用する卒業研究や、教職員によるアンケートの集計など、幅広い活用が見込まれる。

特別講座では、そうした受講者にもわかりやすいように、JMPの簡単さや、JMPで描くグラフの表現力などについても伝えられるように工夫した。牧下氏は、自身の教育研究においてもJMPで簡単に表現力豊かなグラフを出力してみようと考えている。そうしたリアルなニーズは、講義内容をより良くすることにつながった。統計のためのJMPではあるのだが、JMPを経て統計の世界へ入る、という道もあるのかもしれない。

統計をより身近に感じてもらえるように

牧下氏は、「私たちは、日常的に統計に接しています。しかし、統計を苦手だと思い込んでいる人は多いように感じます」と話す。統計の正規分布において、平均値±3シグマ内にデータの約99.7%が分布する。範囲外にあるのはわずか約0.3%で、分数にすると1000分の3。これは、「千三つ(せんみつ)」という日本古来の隠語に通ずる。「統計は、このように気づかないうちに身の回りにあるものなのです。JMPという優れたツールを使うことで、統計をより身近に感じてもらえるようになるはずです」。

夏季集中講座は、2014年の1回きりで終わるわけではない。学生は、毎年新しく入ってくる。継続的に開講することで、初めての受講者にはJMPを知ってもらい、それ以降の受講者にも新たな発見をしてもらえるような講座にしたい。学生たちが将来、晴れて教壇に立つ日、JMPは先生としての持っている引き出しのひとつになるだろう。

牧下氏は、「夏季集中講座だけではなく、通常の講義でも政府統計データをJMPで分析してみるなど、実験的な試みをやっていきたいと考えています。JMPをだれもが使える環境にあるわけですから、積極的に活用し、今後も統計教育に役立てていきます」と話している。

※ 本事例に記載の内容は2015年5月時点のものです


芝浦工業大学について


設立年:1927年

学生数:約8,500人(2015年度)

芝浦工業大学は、創立当時より「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」を建学の精神とし、実用的な知識と技術を併せ持ち技術立国を担う技術者、さらに高い倫理観と豊かな見識を備えた優れた技術者の育成に取り組み、社会の進歩発展に貢献してきました。

2015年に創立88周年を迎える芝浦工業大学は、今後国内だけでなく海外との交流を通じて広く世界に学び、国際社会に貢献する大学としてグローバルな教育・研究力を発揮し、社会の期待に応えていきます。


生徒に数学への興味関心をもたせることができる先生を育てたいのです。
牧下 英世 氏

芝浦工業大学 工学部
准教授
共通学群 教職科目(数学教育)

リンク
お問い合わせ

Back to Top