有害な外来生物の対策

USDA(米国農務省)は外来生物の問題にどのように取り組んでいるのでしょうか? もちろん、統計を活用しています。

課題米国の農業資源および天然資源を有害な外来生物がもたらすリスクから保護
ソリューションUSDAは、JMP®を利用して標本設計、実験計画、再計画、データ分析などを実施
結果USDA の植物保護検疫局(PPQ)の科学者は、JMP® を活用することで、有害植物侵入のリスク評価、侵入の抑制、移動や個体数の監視を実現

ネッド・ジョーンズ氏のオフィスで電話が鳴るときは、新たな難題が突き付けられる可能性があるときです。しかし同時に、JMPが必要となる絶好のチャンスでもあります。

ジョーンズ氏は、USDAの動植物検疫局(APHIS)に勤めています。APHISは6つの部署で構成され、獣医局と植物保護検疫局(PPQ)が二大部署となっています。ジョーンズ氏は、ノースカロライナ州ローリーに本部を置くPPQの科学シンクタンク、植物科学技術センター(Center for Plant Health Science and Technology)で唯一の統計学者です。

ジョーンズ氏の話によると、獣医局では、一般的に約50種の外来生物に対処するために、確立したサンプリングと統計システムによってそれらを追跡しています。また植物保護検疫局では、米国に侵入して植物を襲う害虫、植物に対する病害、他の植物を攻撃する植物など、新たに次々と出現する50,000種以上の有害生物に対処しています。

PPQの科学者は、外来生物の国内侵入を阻止することに関わる幅広いプロジェクトと、すでに侵入してしまった外来生物のまん延を防ぐために、SAS®とJMPを利用しています。ジョーンズ氏は毎日JMPを活用して、標本設計、実験計画と再計画、データ分析などを必要とする一連の問題について深く掘り下げて調査しています。JMPは、日常的にデータ可視化と問題解決のために使用されています。

リスク評価

米国内への農産物(植物または植物生成物)の持込みを承認するには、原産国内でその農産物に関連した外来害虫の特定と、害虫の分析、さらに消費者に届くまでの農産物の移送に伴う害虫抑制のための軽減計画が必要です。

「私たちは総合的病害虫・雑草管理(IPM)を推進することで、米国への農産物の輸入時にあらゆる防除法の組合せを採用するよう各国に働きかけています」と、ジョーンズ氏は説明します。

有害な外来生物の侵入に影響する要因を把握し理解しているため、リスク管理者は、外来生物のリスクを許容レベルまで低減するための複数のリスク管理オプションを特定できます。IPM計画には、噴霧計画、間引き収穫、ワックス塗布、冷暖対策、被害果実を検出する収穫機などが含まれます。USDAは標本計画を提供していますが、最近まで計画のほとんどは、確率論に基づいていませんでした。

「これらの軽減処置は不十分な場合もあれば、過剰すぎる場合もあります」と、ジョーンズ氏は言います。「私たちは、『よし、これが最初の処置で生き残ったものだ。次の処置ではどれだけ生き残るだろうか?』という問いに答える数学モデルを構築する予定です。これらの軽減処置を、農産物の国内輸入を許可できるほど生存確率が十分低くなるまで、併用したり逐次的に追加したりし続けます。難しいのは、軽減処置がどのように相互作用するかを知ること、つまり軽減効果が個別的なのか、相乗的なのか、または拮抗的なのかを把握することです。

「私たちはJMPのプロファイルを利用してシミュレーションし、計画を共有しています」と、ジョーンズ氏は言います。

PPQはJMPのプロファイルを利用して、2項分布や超幾何分布を基に、検出レベル、検出感度、侵入の確率、信頼性、標本サイズを含む標本設計を作成しています。JMPのプロファイルを見れば、単段と多段両方の標本設計に対する要因の相互作用を確認できます。

また、PPQは十分なデータを利用できない有害な外来生物のリスク分析も実施していますが、それには専門家の意見に頼る必要があります。専門家は、どの軽減処置が最も生存確率が高いか、最も可能性が高い反応はなにか、最も生存確率が低いものが何かを定義します。JMPのプロファイルを利用することで、こうした意見を、基礎となるベータパラメータを使って、ベータ分布の特殊なケースであるPert分布としてあらわします。このプロセスによって、専門家の意見をJMPプロファイルでシミュレーションすることができます。これらのシミュレーションを組み合わせることで、併用処置の効果もモデル化できます。

アオナガタマムシの追跡

USDAは外来害虫を追跡し、人口密集地、農地、天然資源との関わりを調べています。USDAは新たな捕捉場所と日付を記録して、JMPの地図機能と動的なバブルプロットを使用してデータを視覚化します。

最近の例では、輸送する生産物の保護に使われることの多い木材梱包材(検疫措置に関する国際基準No.15 (ISPM 15) の監視対象)に関するものがありました。

「これは大きな問題であることが分かりました」と、ジョーンズ氏は話します。「木材梱包材を通じて国内に侵入していると判明している害虫例が、アオナガタマムシとツヤハダゴマダラカミキリ(Asian longhorned beetle) です。これらの害虫、特にアオナガタマムシは国内での数がますます増えており、私たちはその抑制方法を探しています」。

アオナガタマムシは1990年代に侵入して以来14の州に広がり、恐らく1億本ものトネリコの木を枯らしています。

数年前にジョーンズ氏は、害虫を食い止めるにはどこに集中して取り組むべきかを判断するため、JMPを使って害虫が毎年どの程度移動しているかを見積もるモデルを開発しました。ジョーンズ氏は、害虫の探索領域をこれまで考えられてきたよりも相当遠くまで拡大しなければならないことに気付きました。

信頼の確立

ジョーンズ氏は、米国防総省の別の ISPM 15プロジェクトでの任務にもJMPを使用しました。

「米国はNATO軍を支援するために何十年にもわたり欧州に弾薬を輸送しています」と、ジョーンズ氏は言います。「しかし、5年ほど前、欧州側は木箱(主に松材)の使用中止を求めてきました。なぜなら、松材線虫という微小な虫が寄生していることを恐れたからです。害虫が針葉樹林に侵入して大きなダメージを与えることを懸念したのです」。

「飛翔性」の検査

USDAでは、不妊虫放飼プログラムを実施しています。

「一部の虫では、メスは1匹のオスとしか交尾しません」とジョーンズ氏は説明します。「もし大量の不妊オスを放飼できたら、個体数を減らせます」。

USDAには、害虫を大量飼育して放射線で不妊化する施設があります。成虫になったら、取り組み対象地域に放して害虫を抑制または減少させます。

ジョーンズ氏は、綿を食い荒らすワタアカミムシのプロジェクトと、ミバエのプロジェクトの2つに取り組んできました。

「私たちは、メキシコ国境全体に不妊ミバエを放してミバエの個体数を減らしています」と、ジョーンズ氏は言います。「国境の向こう側については何もできませんが、国境に大量の不妊オスを放せば、この国での繁殖の可能性が低くなります」。

USDAは、ミバエがまん延している地域、グアテマラとハワイに2つの飼育施設を備えています。ミバエの不妊オスは、次はカリフォルニアへ送られます。

「外来生物は天敵のいない地域に侵入して、爆発的に増えます」と、ジョーンズ氏は説明します。

ジョーンズ氏は、米陸軍武器庫の銃弾の調査において、すべての標本設計と標本抽出にJMPを使用しました。調査設計では、95パーセントの信頼性で侵入率が0.5パーセント未満であったという証拠を欧州側に提供する必要があります。

「それらが到着したら、科学者はミバエが健康であるかを判断するための基準を得るために各バッチを検査します。私たちは、そのうちの何匹が『飛翔性』であるかを把握したいのです」

「ミバエの飛翔力は強くありません。しかし、ミバエに飛び回ってメスにたどり着いてほしいわけです。そのため、各グループを検査して、飛翔力の強いミバエの割合を測定します。2時間まず検査し、その後、より長い時間、検査します」。

「私はそのためのモデルをJMPで開発しました。これは、有意義な結果を生む非常に興味深いアプリケーションです」。

自信の向上

ジョーンズ氏はJMPを毎日使用している一方で、他の科学者による独自データの分析も手伝っています。

「JMPの使いやすさは、仕事で統計を利用する人々の自信を間違いなく高めています」と、ジョーンズ氏は言います。

将来的にジョーンズ氏は、2段サンプリングでさらなる実験を行う予定です。

「果物の平均出荷量は約1,800箱です。では、何箱を開封すべきでしょうか? 開封後に各箱に入っている何個の果物を検査すべきでしょうか?」

「そうした答えを知るために、確率と統計をさらにうまく活用していきます。それこそが、私がJMPを使用して行っていることです」と、ジョーンズ氏は言います。


 外来生物は天敵のいない地域に侵入して、爆発的に増えます。
ネッド・ジョーンズ

USDAの植物保護検疫局科学者

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