公開日: 11/25/2021

Image shown hereKackar-Harvilleの修正

固定効果の共分散行列は、Kackar‐Harvilleの修正を行って求められています。ただし、BLUPの共分散行列と、BLUPと固定効果の間の共分散に対しては、Kackar‐Harvilleの修正は行われません。変量効果に数多くの水準がある場合、BLUPの修正は計算が複雑になり、多くのメモリを必要とするためです。SASでは、Kackar-Harvilleの修正は、DDFM=KENWARDROGERが設定された場合にのみ、固定効果とBLUPの両方に対して行われます。

なお、共分散パラメータに関しての2次微分でゼロではない要素を含む共分散構造に対しては、従来のKenward-Roger調整の計算では2次微分の項が含まれます。この2次微分の項を計算に含めると、標準誤差が縮小してしまうことがあります。さらに、推定値の共分散行列が正定値行列でなくなる場合もあり、また、異なったパラメータ化に関して不変ではありません。JMPで採用されているKenward-Roger調整の1次修正では、調整の計算から2次微分の項を除外しています。一般的に、すべての空間構造およびAR(1)構造では、Kenward-Roger調整において、2次微分でゼロではない要素を含みます。

JMPでは、Kenward‐Rogerの1次修正が採用されています。SASの結果と比べると、以下のような違いがあります。

固定効果パラメータしかない線形結合の標準誤差は、PROC MIXED DDFM=KENWARDROGER(FIRSTORDER)に一致します(PROC MIXEDとJMPで同じパラメータ化を行った場合)。

BLUPパラメータしかない線形結合の標準誤差は、PROC MIXED DDFM=SATTERTHWAITEに一致します。

固定効果とBLUPの両方のパラメータを持つ線形結合の標準誤差は、不釣合い(アンバランス)なデータに対しては、PROC MIXEDのどのDDFMオプションの結果にも一致しません。ただし、これらの標準誤差は、DDFM=SATTERTHWAITEオプションとDDFM=KENWARDROGERオプションから得られる誤差の中間になります。釣合い(バランス)が取れているデータに対しては、どのようなDDFMオプションであっても、Kackar-Harville修正は影響しないため、JMPとSASで得られる標準誤差は等しくなります。

Image shown here自由度

固定効果パラメータの線形結合だけを含む検定の自由度は、Kenward-Rogerの1次修正を使って計算されるため、JMPでの検定結果はDDFM=KENWARDROGER(FIRSTORDER)オプションを使用した場合のPROC MIXEDと一致します。線形結合にBLUPパラメータが含まれている場合は、JMPではSatterthwaiteの近似を使って自由度を求めます。このため、結果は前述のようなパターンになります。

Kackar-Harvilleの修正とKenward-Rogerの自由度のアプローチの詳細については、Kenward and Roger(1997)を参照してください。Satterthwaite法の詳細については、SAS Institute Inc.の「MIXED Procedure」章を参照してください(2020d, ch. 83)。

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).