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公開日: 09/19/2023

「破壊劣化」プラットフォームの例

この例では、あるストレス条件を適用した後で、強度が閾値より小さくなるユニットの割合を推定することが目的です。このデータテーブルには、接着剤の強度(単位はニュートン)に関する測定値が記録されています。この試験では、加速因子として温度が使われています。接着剤がはがれるまで製品に圧力を加え、強度を記録しました。通常の温度ではユニットが故障することは稀なので、加速因子でいくつかの水準を設定して試験しました。強度が50ニュートン以下の場合、故障とみなされます。摂氏35度の基準温度で260週間(5年間)経過後、強度が50ニュートンを下回る割合を推定します。本節で述べる加速破壊劣化モデルの例は、Escobar et al.(2003)で取り上げられているものを参考にしています。

この例の分析には3つの段階があります。

最初の分析を行う

モデルを変更してレポートを生成する

予測プロファイルを用いる

最初の分析を行う

1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Reliability」フォルダにある「Adhesive Bond.jmp」を開きます。

2. [分析]>[信頼性/生存時間分析]>[破壊劣化]を選択します。

3. 「強さ」を選択し、[Y, 目的変数]をクリックします。

4. 「週数」を選択し、[時間]をクリックします。

5. 「温度」を選択し、[X]をクリックします。

温度は、この実験における加速因子です。

6. 「打ち切りの有無」を選択し、[打ち切り]に指定します。

[打ち切りの値]が「Right」(右側)になっていることを確認してください。

7. [OK]をクリックします。

図9.2 最初の劣化プロット 

最初の劣化プロット

プラットフォームによってデフォルトのモデルが指定されます。デフォルトのモデルは、位置パラメータが時間の線形関数となっている正規分布です。

モデルを変更してレポートを生成する

1. Y(「強さ」)の変換に[Log]を選択します。

2. 時間(「週数」)の変換に[平方根]を選択します。

3. 「経路の定義」においてm = b0x + b1x*f(time)を選択します。

添え字の「x」は加速因子を表し、この例では「温度」です。

メモ: このモデルはすべてのパラメータにおいて線形です。

図9.3 モデルを表示したプロット 

モデルを表示したプロット

4. [レポートの生成]をクリックします。

図9.4 基本的なモデルのレポート 

基本的なモデルのレポート

「温度」の3つの水準における傾きb1の推定値を見ると、温度が高いほど劣化が早く起こっていることがわかります。化学反応に左右される故障のメカニズムは、多くの場合、温度に関するArrheniusモデルを使うとうまくモデル化できます。そのため、ここで「温度」(摂氏)にArrhenius変換を適用したモデルをあてはめましょう。

5. 「経路の定義」でm = b0 ± Exp(b1 + b2*Arrhenius(X))*f(time)を選択します。

メモ: このモデルはパラメータにおいて線形ではありません。

6. [摂氏]を選択して[OK]をクリックします。

図9.5 Arrhenius変換を行ったモデルを表示したプロット 

Arrhenius変換を行ったモデルを表示したプロット

7. [レポートの生成]をクリックします。

図9.6 Arrhenius変換を行った2番目のモデルを含んだレポート 

Arrhenius変換を行った2番目のモデルを含んだレポート

予測プロファイルを用いる

Arrheniusモデルの方がAICcとBICの値が小さく、あてはまりが良いことがわかります(Figure 9.6)。このモデルを使って分析を進めましょう。

この例では、接着の強度が50ニュートン以下なら故障とみなすということでした。摂氏35度という基準温度の環境で156週間(3年間)経つと、強度がどれぐらいになるかを確かめてみます。プロファイルの設定をこれらの値に変更します。各プロットで、横軸の下の赤字の値をクリックし、新しい値を入力します。

1. Arrheniusモデルの「劣化プロファイル」で、「週数」を156、「温度」を35とします。

図9.7 劣化プロファイル 

劣化プロファイル

以上の設定の「強さ」は62.25173、95%予測区間は50.03181~77.45627です。この温度と経過時間においてはあまり故障しないと考えられます。

2. 「交差時間分布プロファイル」で、「週数」を156、「温度」を35、そして「強さ」を50とします。

図9.8 交差時間分布プロファイル 

交差時間分布プロファイル

摂氏35度で156週間使用したとき、「強さ」の値が50以下になる確率は0.024668です。95%信頼区間は0.00342~0.10995です。つまり、この設定において故障する確率は約2%です。

3. 「交差時間分位点プロファイル」で、「温度」を35、「確率」を0.02、そして「強さ」を50とします。

4. 「交差時間分位点プロファイル」の縦軸を、最大値がたいだい350になるように調整します。

図9.9 交差時間分位点プロファイル 

交差時間分位点プロファイル

摂氏35度で2%のユニットが故障する週数は、146.0928週と予測されます。95%信頼区間は89.11616~277.4563です。

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