[多重比較]オプションを選択したときの多重比較の方法のひとつとして、[全体平均との比較]があります。このオプションは、各グループの平均を、全体平均と比較します。また、全体平均との差の信頼区間を、表とグラフで示します。この手法は、平均分析(ANOM; analysis of means)と呼ばれます(Nelson, et al., 2005)。この比較では、各グループの平均を全体平均と比較するので、複数回の比較が行われます。平均分析では、複数回の比較で生じる多重性を調整しています。例として、全体平均との比較の例を参照してください。
平均分析は、分散分析と同じように思えるかもしれません。しかし、平均分析は、いくつかの水準のなかで、どのグループの平均が全体平均と異なるかを特定します。一方、分散分析のF検定は、いずれかのグループの平均が全体平均と異なっていることが分かるだけで、どのグループの平均が全体平均と異なっているかは特定できません。
「全体平均との比較」レポートの上部には、次のものが表示されます。
分位点
決定限界を計算するのに使用されるNelsonのh統計量。
自由度
信頼区間を算出する際に使用された自由度
平均
この「平均」は、グループの最小2乗平均の重み付き平均です。この重み付き平均は、グループの最小2乗平均における中立的な全体平均を表していると考えられます。
この重み付き平均の重みには、L(X′X)−1L′の対角要素の逆数が使われます。ここで、Lは、最小2乗平均を算出する係数からなる行列です。最小2乗平均については、SAS Institute Inc.(2023b)の「GLM Procedure」章を参照してください。
ユーザ定義の推定値でも、平均分析での全体平均は、同様に推定値の重み付き平均として定義されます。この場合、Lは推定値を算出する係数からなる行列になります。
調整方法
棄却値やp値を求めるために使用された計算手法。
Nelson
この方法は、正確な棄却値とp値を算出します。正確なNelson法は、推定値の間に相関がない場合だけに使えます。
Nelson-Hsu
Hsuの因子分析型近似法です(Hsu, 1992)。この方法は、棄却値とp値の近似値を算出します。この近似法は、正確なNelson法が使えないような状況で使用されます。
Sidak
Nelson法、Nelson‐Hsu法の計算が失敗した場合に使用されます。
技術的な詳細については、SAS Institute Inc.(2023b)の「GLM Procedure」章を参照してください。
「全体平均との比較」レポートメニューからは、次の3つのオプションが使用できます。
各グループの平均を、全体平均と比較します。次のような統計量が表示されます。
• 比較する水準
• 差 - 差の推定値
• 標準誤差 - 差の標準誤差
• 信頼区間の上限と下限
• t値 - 「差」を「標準誤差」で割った比
このグラフでは、各グループの平均が点でプロットされます。また、全体平均が水平線で描かれ、その上側と下側に決定限界が描かれます。あるグループの平均の点が、決定限界の外側にある場合、そのグループは平均分析において有意な差があります。グラフで使われている有意水準は、グラフの下に表示されます。
「全体平均との比較 グラフ」レポートのメニューには、次のオプションがあります。
要約レポートの表示
各グループの推定値、決定限界、および限界外を示した表を表示します。
表示オプション
グラフの見栄えを変更するためのいくつかのオプションがあります。
p値(Prob>|t|)を含む列を「全体平均との比較」レポートに追加します。バランスが取れていないデータや複雑な比較などでは積分が複雑になり、計算量が少なくてすむアルゴリズムで棄却値やp値を求められないときがあります。そのため、そのような状況では、Hsuの因子分析型近似法が使われます。なお、近似法の計算が失敗した場合には、Sidak法によって棄却値が計算されます(このとき、p値は計算されません)。