構造方程式モデルの概要「構造方程式モデル」プラットフォーム(SEM; Structural Equation Models)では、さまざまなモデルをあてはめることができ、また、それらのモデルにおける変数間の関係についての仮説を検証することができます。モデルに含まれる変数には、観測されるもの(顕在変数)と、観測されないもの(潜在変数)があります。構造方程式モデルは、社会科学や行動科学の分野でよく利用されます。
このプラットフォームでは、デフォルトでは、(標準化したデータに対するモデルではなく)平均パラメータと分散パラメータを含むモデルがあてはめられます。「構造方程式モデル」プラットフォームでは、モデル作成の画面が表示されます。この画面において、作成中のモデルをいくつかの観点からチェックできます。さらに、モデルを作成する途中で、モデルの識別性に関する情報が表示されます。推定できないであろうモデルに対しては、実行前に警告が表示されます。
1つまたは複数のモデルをあてはめた後、それらのモデルと2つの基本モデルを「モデルの比較」レポートで比較できます。基本モデルには、「無構造モデル」(無制約モデル; unrestricted model)と「独立モデル」の2つがあります。「無構造モデル」は、指定されたすべての顕在変数に関して、すべての平均パラメータ・分散パラメータ・共分散パラメータを仮定したモデルです。この無構造モデルは、データにまったく構造を仮定しない飽和モデルです。一方、「独立モデル」は、指定されたすべての顕在変数に関して、すべての平均パラメータと分散パラメータだけを仮定したモデルです。独立モデルでは、顕在変数間の共分散はゼロに固定されます。そのため、かなり制約されたモデルです。
「構造方程式モデル」プラットフォームでは、完全情報最尤法(FIML; Full Information Maximum Likelihood: Finkbeiner 1979)によってモデルを推定します。完全情報最尤推定は、ランダムな欠測が多くの割合で生じている場合でも、観測されたデータから得られるすべての情報を用いて、モデルを推定します。
構造方程式モデルの詳細については、SAS Institute Inc.(2023a)の「CALIS Procedure」章、Bollen(1989)、Kline(2016)を参照してください。
メモ: 「構造方程式モデル」プラットフォームで推定されるモデルには、すべて平均構造が含まれています。この平均構造は、リストでは「Constant」項(定数項)として表示されます。観測変数ごとの平均パラメータに制約を何も課したくない場合は、デフォルトの平均構造(各変数ごとに別々に平均パラメータを設定している構造)のように、平均パラメータを制約なく推定できるようにする必要があります。