「構造方程式モデル」プラットフォームの測定誤差モデルは、アンケートの回答を分析する際、回答に不正確さや偏りがあると思われるような場合に適しています。この例では、社員の業務満足度を探るため、職場の状況に関するアンケート調査への回答を分析します。アンケートには11個の質問項目があり、リーダーシップ、葛藤、業務満足度という3つのカテゴリに分けられます。各カテゴリの回答を平均して、カテゴリごとのスコアを求めるものとします。
ここで、リーダーシップと葛藤が、全体的な業務満足度とどのように関係しているかを把握したいとしましょう。このとき、質問への回答に誤差があることを前提とするならば、測定誤差モデルを使って不正確さを調整できます。測定誤差が発生する理由はいくつかありえます。たとえば、回答者が業務満足度を過大評価または過小評価しているケースが考えられます。また、回答者によって質問の解釈が異なることによって、測定誤差が系統的に発生する可能性があります。さらに、質問そのものが、把握したい業務満足度の側面を正確に捉えられていない場合があります。
ここでは、説明変数または応答変数に測定誤差があることが、過去の調査からわかっているケースについて考えてみましょう。ここでは、信頼できる分散の推定値(信頼性)が、「Leadership_Avg」は0.87、「Conflict_Avg」は0.76、「Satisfaction_Avg」は0.82であると仮定します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Job Satisfaction.jmp」を開きます。
2. [分析]>[多変量]>[構造方程式モデル]を選択します。
3. [Leadership_Avg]、[Conflict_Avg]、[Satisfaction_Avg]を選択し、[モデルの変数]をクリックします。
4. [OK]をクリックします。
5. 「モデルのショートカット」の赤い三角ボタンをクリックし、[モデル指定の補助]>[測定誤差の固定]を選択します。
6. 「観測変数における測定誤差の固定」ウィンドウで、[Leadership_Avg]、[Conflict_Avg]、[Satisfaction_Avg]を選択します。
7. 「固定したいパラメータ値」で[信頼性 (0~1)]を選択し、「Leadership_Avg」、「Conflict_Avg」、「Satisfaction_Avg」にそれぞれ、「0.87」、「0.76」、「0.82」を入力します。
ヒント: 固定値の横のテキストボックスで、潜在変数のデフォルトの名前を変更できます。
8. [OK]をクリックします。
9. 「矢印の元」で[真値 Leadership_Avg]、[真値 Conflict_Avg]を選択し、「矢印の先」で[真値 Satisfaction_Avg]を選択して、一方向の矢印ボタン(
)をクリックします。
10. 「矢印の元」で[真値 Leadership_Avg]を選択し、「矢印の先」で[真値 Conflict_Avg]を選択して、双方向の矢印ボタン(
)をクリックして、「Leadership_Avg」と「Conflict_Avg」の潜在変数間の共分散を指定します。
図8.22 測定誤差モデルの指定
11. 「アクション」で[実行]をクリックします。
図8.23 測定誤差モデルのレポート
「構造方程式モデル」レポートに、「あてはめの要約」表、「パラメータ推定値」表、あてはめたモデルの「パス図」が表示されます。「パラメータ推定値」を見ると、従属変数と独立変数の間に有意な効果があることがわかります(p値<0.0001)。「真値 Leadership_Avg」と「真値 Conflict_Avg」のパラメータ推定値は、それぞれ0.457、-0.469となっています。また、これらの標準誤差は、それぞれ0.099、0.108となっています。
パス図からも、「真値 Leadership_Avg」と「真値 Satisfaction_Avg」の間、および、「真値 Conflict_Avg」、「真値 Satisfaction_Avg」の間に、はっきりとした直接的関係があることが示されています。「真値 Leadership_Avg」と「真値 Conflict_Avg」の間の共分散は、-0.477となっています。パス図には、「観測変数における測定誤差の固定」ウィンドウで指定した信頼性の固定値(0.87、0.76、0.82)から変換された測定誤差分散の推定値が示されています。具体的には、「Leadership_Avg」は0.106、「Conflict_Avg」は0.211、「Satisfaction_Avg」は0.159となっています。
1. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
2. [Satisfaction_Avg]を選択し、[Y]をクリックします。
3. [Leadership_Avg]と[Conflict_Avg]を選択し、[追加]をクリックします。
4. [実行]をクリックします。
図8.24 重回帰のパラメータ推定値
Figure 8.24の推定値を見ると、両方の説明変数について有意となっています(p値<0.0001)。測定誤差を無視して重回帰モデルをあてはめた場合、「Leadership_Avg」と「Conflict_Avg」の推定値はそれぞれ、0.467と-0.351になります。なお、これらの値が、測定誤差モデルから計算した推定値(0.457、-0.469)と異なることに注意してください。説明変数に対する標準誤差の推定値も、これらのモデル間で異なっています。測定誤差モデルでは、「真値 Leadership_Avg」と「真値 Conflict_Avg」の標準誤差推定値はそれぞれ0.099と0.108でしたが、重回帰モデルでは、「Leadership_Avg」と「Conflict_Avg」の標準誤差推定値は0.064と0.061です。Figure 8.23とFigure 8.24は、測定誤差を考慮した場合と無視した場合で、説明変数のパラメータ推定値および標準誤差がどのように異なるかを示しています。測定誤差を考慮した場合、標準誤差の推定値が大きくなっていることに注目してください。