「構造方程式モデル」プラットフォームでは、集団間や時点間におけるモデルの不変性を調べるため、特定のモデルを指定して、異なるグループや異なる時点における潜在変数の平均や分散などを比較できます。この例では、配置不変(configural invariance)・弱不変(weak invariance)・強不変(strong invariance)・厳密不変(strict invariance)なモデルをあてはめてみて、グループ間の測定モデルの不変性を調べます。多様性(Diversity)、公平性(Equity)、インクルージョン(Inclusion)に対する学生の意識を表す潜在変数「DEI」を指定し、この潜在変数が「促進」・「文化的」・「批判的」という観測変数によってどれだけよく表されているかをジェンダー(GirlおよびBoy)間で調べてみましょう。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Secondary Students.jmp」を開きます。
2. [分析]>[多変量]>[構造方程式モデル]を選択します。
3. [促進]・[文化的]・[批判的]を選択し、[モデルの変数]をクリックします。
4. [ジェンダー]を選択し、[グループ]をクリックします。
5. [OK]をクリックします。
6. 「モデルのショートカット」の赤い三角ボタンをクリックし、[横断調査の古典的モデル]>[多母集団の測定不変性]を選択します。
7. 「モデルの選択および指定」ウィンドウで、指標変数のリストから[促進]・[文化的]・[批判的]を選択し、テキストボックスに「DEI」と入力して、
ボタンをクリックして潜在変数を追加します。
メモ: デフォルトで、4つのモデルすべてがあてはめられて、比較されます。[すべての不変モデルをあてはめて比較]のチェックボックスをオフにして、個々のモデルを選択することもできます。ごく一部分の不変性だけを確かめたい場合には、データへの適合度が良さそうな特定の不変モデルを1つだけ指定して、そのモデルから制約の一部を緩めると、操作が楽です。
8. [OK]をクリックします。
「モデルの比較」および「カイ2乗検定」レポートと、個々のモデルの「構造方程式モデル」レポートが表示されます。「構造方程式モデル」レポートは、グループごとにタブがあります。
図8.29 「モデルの比較」および「カイ2乗検定」レポート
「モデルの比較」および「カイ2乗検定」レポートでは、不変性が異なる数種類の測定モデルについて、モデルのあてはめを評価できます。この例では、「カイ2乗検定」やCFIおよびRMSEAに基づけば、比較対象のモデルの中で、「強不変」モデルが最適なモデルであろうと判断できます。この強不変モデルは、「因子負荷量および切片がグループ間で等しい」という制約があるものです。強不変モデルが成り立っていれば、「潜在変数の平均がジェンダー間で有意に異なるかどうか」を評価できます。この強不変モデルのCFIの値(0.9974)とRMSEAの値(0.0456)は、モデルの適合度は良いことを示しています。また、「カイ2乗検定」レポートを見ると、標本サイズが大きいにもかかわらず、「強不変」モデルと、制約が比較的少ない「弱不変」モデル間に、有意な差がないことがわかります。これは、強不変モデルにおいて、モデル適合度が犠牲になっていないことを示しています。厳密不変モデル(グループ間で残差分散も等しいと制約するモデル)もあてはめましたが、潜在変数の平均がグループ間で有意に異なるかどうかを評価するのに、通常はそこまでの厳しい不変性は必要ありません。強不変モデルと厳密不変モデルを比較すると、後者の厳密不変モデルではモデル適合度が著しく低下しています。このことから、「グループ間で残差分散も等しい」という制約はきつすぎるか、不要であることが伺えます。これらのことから、強不変モデルを最終的なモデルとして採用することにしましょう。強不変モデルが成り立っていれば、グループ間の潜在平均を比較することはできます。
9. 「モデルの比較」レポートで、「配置不変」・「弱不変」・「厳密不変」モデルの横の
ボタンをクリックします。
そうすると、対応する「構造方程式モデル」レポートが非表示になります。
10. Altキーを押しながら「構造方程式モデル: 強不変」の赤い三角ボタンをクリックします。
ヒント: Altキーを押すと、赤い三角ボタンのメニューを複数同時に選択できます。
11. [パス図の表示]、[あてはめの要約]、[パラメータ推定値]オプションの選択を解除します。
12. [標準化したパラメータ推定値]を選択します。
この選択内容は、「Girl」と「Boy」の両方のタブに適用されます。
メモ: 「標準化したパラメータ推定値」レポートには、相関係数のスケールにおける推定値が表示されるため、潜在変数および指標変数の関係の解釈が容易になります。この方法は、潜在変数および指標変数の関係の強さを評価するときに特に便利です。大まかに述べて、標準化負荷量の絶対値が0.40以上の場合は、潜在変数に対する強力な指標変数であるとみなせます。この目安は、個々のモデルの状況を踏まえながら、慎重に適用してください。
13. [OK]をクリックします。
14. [Girl]タブか[Boy]タブを右クリックし、[スタイルの設定]>[横に展開]を選択します。
図8.30 「Girl」および「Boy」グループの標準化したパラメータ推定値
Figure 8.30には、強不変モデルの「標準化したパラメータ推定値」が、「Girl」および「Boy」グループについて示されています。これらの推定値から、潜在変数「DEI」と観測変数の関係を、各ジェンダーグループについて検討できます。強不変を仮定したことによって、非標準化因子負荷量がグループ間で等しいという制約が設けられています。グループごとの尺度に基づき、標準化した推定値には若干違いが生じています。「促進」、「文化的」、「批判的」に対するDEIの負荷量は、男女ともに統計的に有意となっています(すべての負荷量についてp値<0.0001)。「Girl」よりも「Boy」の方が負荷量が若干大きいように見えますが、強不変の仮定によりグループ間で負荷量が同じであるという制約が設けられていることを踏まえると、この負荷量の違いは、グループごとのスケールに由来するものであり、実際の構造的な違いに基づくわけではありません。
男女のグループの両方で「DEI」が同じ概念をもち、一貫性のある測定値であるということが、「強不変」モデルによって全体的に示されています。標準化した推定値に若干の差はありますが、潜在変数の関係における全体的構造やその解釈に影響を及ぼすものではありません。このモデルは、異なるジェンダーにおいて、「DEI」という構成概念の頑健性を裏付けるとともに、「DEI」が個々の指標変数のばらつきを説明するにあたり、若干の違いがあることを示しています。