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公開日: 04/21/2025

「マーカーの関係性」プラットフォームの起動

「マーカーの関係性」を起動するには、[分析]>[遺伝学]>[マーカーの関係性]を選択します。「マーカーの関係性」は、個体間のゲノム関係性を表す正方行列を作成します。

図5.3 「マーカーの関係性」起動ウィンドウ 

Marker Relatedness Launch Window

マーカー

分析対象のマーカーを指定するには、該当するマーカー列を選択し、[マーカー]をクリックします。

サンプル ID

各行を一意に識別する値を持つ変数を指定します。

メモ: 変数は1つのみ使用できます。

By

By変数を指定すると、その変数の水準ごとに個別のレポートが作成されます。複数のBy変数を割り当てた場合は、それらのBy変数の水準の組み合わせごとに個別にレポートが作成されます。

倍数性

調査対象である生物の倍数性(ploidy)を指定できます。メモ: 偶数でなければなりません。

乱数シード値の設定

疑似乱数系列の開始値として、負でない整数を指定します。シード値が異なれば、シミュレーションの結果も異なります。

ゲノム関係性の種類

サンプル間の関係(行間の関係)を表す指標の種類を指定します。

[同一状態 (IBS)]は、アレルの一致性で個体の関係性を測ります。

[相加性](Additive)は、マーカーの値を加法的なものとして、個体間の関係性を測ります。求められた個体間の関係性は、アレルの加法的な主効果を調べるのに使えます。

[顕性](Dominance)では、求められた個体間の関係性が、アレルの交互作用効果を調べるのに使えます。

[エピスタシス]では、求められた個体間の関係性が、異なるマーカーの交互作用の効果を調べるのに使えます。

相加的関係の種類

相加的な関係性における種類を指定します。

VanRadenの1番目の手法(Van Raden, et al., 2008)を使って関係行列を求めるには、[二倍体法1]を選択します。(P.M. Van Raden, “Efficient Methods to Compute Genomic Predictions“. J.Dairy Sci. 91:4414-4423, 2008)

VanRadenの2番目の手法(Van Raden, et al., 2008)を使う場合は、[二倍体法2]を選択します。(P.M. VanRaden, “Efficient Methods to Compute Genomic Predictions“. J.Dairy Sci. 91:4414-4423, 2008)

Batista et al.(2022)の手法を使う場合は、[多倍体]を選択します。この手法では、相加的効果の共分散行列を、倍数性(ploidy)およびアレルの個数を用いながら求めます。Batista, L.G., Mello, V.H., Souza, A.P. et al. Genomic prediction with allele dosage information in highly polyploid species. Theor Appl Genet 135, 723–739 (2022). https://doi.org/10.1007/s00122-021-03994-w

メモ: このオプションは、ゲノム関係性の種類として[相加性]を選択した場合、または[エピスタシス]を選択し、かつ[エピスタシス的関係の種類]として[相加性×相加性]または[顕性×相加性]を選択した場合にのみ使用できます。

顕性的関係の種類

評価する方法を指定します。

Su, et al.(2012)の手法を使う場合は、[二倍体法1]を選択します。(Su G, Christensen OF, Ostersen T, Henryon M, Lund MS.Estimating additive and non-additive genetic variances and predicting genetic merits using genome-wide dense single nucleotide polymorphism markers. PLoS One. 2012;7(9):e45293. doi: 10.1371/journal.pone.0045293. Epub 2012 Sep 13. PMID: 23028912; PMCID: PMC3441703.)

Vitezica, et al.(2013)の手法を使う場合は、[二倍体法2]を選択します。この手法も、個体間の顕性ゲノム関係行列を作成します。この手法でも、作成した関係行列は、顕性効果部分の分散を推定するために、混合モデルで利用することができます。Zulma G Vitezica, Luis Varona, Andres Legarra. 2013. On the Additive and Dominant Variance and Covariance of Individuals Within the Genomic Selection Scope, Genetics 195: 1223–1230. (https://doi.org/10.1534/genetics.113.155176)

Batista et al.(2022)の手法を使う場合は、[多倍体]を選択します。この手法では、顕性効果(dominance effect)の共分散行列を、倍数性(ploidy)およびアレルの個数を用いながら求めます。Batista, L.G., Mello, V.H., Souza, A.P. et al. Genomic prediction with allele dosage information in highly polyploid species. Theor Appl Genet 135, 723–739 (2022). https://doi.org/10.1007/s00122-021-03994-w

メモ: このオプションは、ゲノム関係性の種類として[顕性]を選択した場合、または[エピスタシス]を選択し、かつ「エピスタシス的関係の種類」として[顕性×相加性]または[顕性×顕性]を選択した場合にのみ使用できます。

エピスタシス的関係の種類

評価する方法を指定します。

[相加性×相加性]を選択すると、ダイアログで指定された相加的関係同士の交互作用が計算されます。たとえば、「相加的関係の種類」が[二倍体法1]の場合、この関係の種類同士についての交互作用が計算されます。

[顕性×相加性]を選択すると、ダイアログで指定された相加的関係の種類と顕性的関係の種類との交互作用が計算されます。たとえば、「相加的関係の種類」が[二倍体法1]で、「顕性的関係の種類」が[二倍体法1]の場合、これらの2つの関係の種類についての交互作用が計算されます。

[顕性×顕性]を選択すると、ダイアログで指定された顕性的関係の種類同士の交互作用が計算されます。たとえば、「顕性的関係の種類」が[二倍体法1]の場合、この関係の種類同士の交互作用が計算されます。

メモ: このオプションは、ゲノム関係性の種類として[エピスタシス]を選択した場合にのみ使用できます。

欠測マーカーの補完法

データに欠測値があると、このプラットフォームで採用されている計算方法で関係行列を求めることはできません。そのため、欠測データを補完する必要があります。このオプションにおいて、欠測値の補完方法を指定します。

[HWE オフ]を選択すると、データの観測度数を母割合とする多項分布の乱数によって欠測値が補完されます。

[HWE オン]を選択すると、Hardy-Weinberg平衡を仮定して求められる割合推定値を母割合とする多項分布の乱数によって欠測値が補完されます。

[ランダム]を選択すると、許容値(0, 1, 2, ..., K(ここで、Kは倍数性における倍数))のいずれかがランダムに割り当てられます。

[指定値]を選択した場合、ゼロから倍数までの指定の整数を使って欠測値が補完されます。

補完値

「欠測マーカーの補完法」で[指定値]オプションを選択した場合、テキストボックスで0から倍数の間の値を指定します。

ここに表示される値は二倍体生物に対するものです。それ以上の倍数については適宜、入力する必要があります。

主成分分析

求められた関係行列に対して、主成分分析を実行するには、このチェックボックスにチェックを入れます。

クラスター分析

求められた関係行列に対して、クラスター分析を実行するには、このチェックボックスにチェックを入れます。

スレッドを使用しない

このオプションをオンにすると、マルチスレッドを使わないようになります。計算速度を速くしたい場合は、このオプションをオフにしてください。

「マーカーの関係性」プラットフォームに必要なデータ形式

JMPで処理や統計分析を行うほとんどの場合において、分析対象のデータテーブルが特定のデータ構造で作成されていることを前提としています。JMPでは、縦長形式(tall; トール)と横長形式(wide; ワイド)のデータ構造が区別されます。縦長形式のデータテーブルは、サンプルが列で、分子に関する情報(マーカー・遺伝子・クローン・タンパク質・代謝物など)が行です。一方、横長形式のデータテーブルは、縦長のデータテーブルを転置したもので、サンプルが行、分子に関する情報が列となります。

分析する入力データセットを指定する際には、ソフトウェアに必要な形式を知っておくことが重要です。「マーカーの関係性」プラットフォームでは、分析対象のデータテーブルを横長形式にしておく必要があります。[テーブル]メニューの[転置]オプションを使用すると、縦長形式のデータテーブルを横長形式に、横長形式のデータテーブルを縦長形式に変換できます。

マーカーのデータは、数値で保存しておく必要があります。また、1つのマーカーに対する情報を、1列に保存しておく必要があります。通常、この形式では、2倍体の生物において、頻度の少ない方の(つまりマイナーアレルの方の)ホモ接合を「2」、ヘテロ接合を「1」で表します。そして、頻度の多い方のアレルのホモ接合は「0」で表します。

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).