公開日: 04/21/2025

Image shown here構造方程式モデルの種類

ここでは、「構造方程式モデル」プラットフォームであてはめることができるモデルをいくつか紹介します。

パス分析

パス分析は、観測変数間の関係を表すモデルです。単純なパス分析は、分析者が興味をもっている構成概念それぞれが1つずつの顕在変数で測定されている時の分析です。パス分析の最も単純なモデルは、XでYを予測する標準的な単回帰モデルでしょう。「構造方程式モデル」プラットフォームでは、単回帰モデルよりも複雑なモデルを指定できます。たとえば、仮説や過去の調査から、変数ZがXYの間の媒介変数になっていると仮定できるとします。言い換えると、XがZを予測し、ZがYを予測できると仮定するということです。つまり、XYという経路は、Zを媒介しているというモデルです。媒介分析を参照してください。パス分析モデルの変数の数が増えると、モデルの複雑さも増します。このような複雑さが増すことで、研究者はより洗練された理論を検証することができます。「構造方程式モデル」プラットフォームでパス分析を実行する手順は以下のとおりです。

1. 起動ウィンドウで、モデルに含める顕在変数(観測変数)をすべて選択して[モデルの変数]をクリックし、[OK]をクリックします。

2. 「モデルの指定」レポートで、「矢印の元」から説明変数を、「矢印の先」からその説明変数に対応する応答変数を選択し、一方向の矢印ボタン(「→」のボタン)をクリックします。

メモ: 外生変数(矢印「→」の先には指定されていない変数)に関しては、「外生変数の相関がゼロである」という仮説を検証したい場合を除き、外生変数間に共分散を自由パラメータとして設定するのが一般的です。変数間の共分散は、双方向の矢印ボタン(「←→」のボタン)で指定できます。

確証的因子分析

確証的因子分析(確認的因子分析, CFA; Confirmatory Factor Analysis)では、測定モデルの一種をあてはめます。確証的因子分析は、調査票の質問項目を開発するときや、構造回帰モデルをあてはめる前の準備段階でよく使用されます。「構造方程式モデル」プラットフォームで確証的因子分析モデルのあてはめを行うには、以下の手順に従います。

1. 起動ウィンドウで、モデルに含める顕在変数(観測変数)をすべて選択して[モデルの変数]をクリックし、[OK]をクリックします。

2. 「モデルの指定」レポートの「矢印の先」で、ある1つの潜在変数から影響していると仮定する、複数の顕在変数を選択します。

3. 「矢印の先」リストの下のボックスに、潜在変数に対する任意の名前を入力し、Image shown hereボタンをクリックして潜在変数を追加します。

4. この手順を繰り返し、モデルに含めるすべての潜在変数を指定します。

なお、「構造方程式モデル」プラットフォームでは常に平均構造が含められるので、観測変数はすべて、「平均/切片」リストに「Constant」項からの矢印があります。また、潜在変数を含むモデルを指定した場合、自動的にモデルが識別されるような設定がなされています。潜在変数を含むモデルが識別できるように、デフォルトでは、1番目の顕在変数に対する負荷量が1に固定されています。また、デフォルトのこの設定ではなく、潜在変数の分散を1に固定するように変更することもできます。なお、通常の単純な確証的因子分析モデルならば、すべての潜在変数の間に共分散を仮定することもできます。そのような共分散を仮定するには、「矢印の元」および「矢印の先」ですべての潜在変数を選択し、双方向の矢印ボタン(「←→」のボタン)をクリックします。

媒介分析

媒介分析では、1つの原因変数(説明変数)と、1つの結果変数(応答変数)の間に、媒介変数があるモデルを指定できます。媒介モデルは、1つ以上の中間変数(媒介変数としても知られる)を介して、予測変数と結果変数の間の間接効果の有無と強さを探索します。「構造方程式」プラットフォームでは、原因変数・媒介変数・結果変数を指定し、単純な媒介モデルを指定できます。[複数の媒介変数]チェックボックスを選択すると、モデルに複数の媒介変数を指定できます。

1. 起動ウィンドウで、原因変数・結果変数・媒介変数を選択して[モデルの変数]をクリックし、[OK]をクリックします。

2. [モデルのショートカット]オプションを使用して、[横断調査の古典的モデル]>[媒介分析]オプションを選択します。

3. [媒介モデルの指定]ウィンドウで、原因変数・媒介変数・結果変数を選択します。

このモデルでは、原因変数の効果は媒介変数を介して結果変数に及びます。例えば、特定の教授法(独立変数)と生徒の学業成績(従属変数)の関係を調べているとします。生徒の授業への参加度(媒介変数)がこの関係を説明するのではないかと予想します。媒介分析のショートカットでは、教授法と学業成績の間の媒介変数に生徒の参加度がなっているのかどうか、その間接効果の大きさについて、点推定値と検定に基づき、評価を行えます。媒介分析の例を参照してください。

構造回帰モデル

構造回帰モデル(SR; Structural Regression Model)は、潜在変数を含むパス分析としても知られます。構造回帰モデルは、確証的因子分析(CFA)をまず行って妥当な測定モデルを決めたあとに、よく使用されます。構造回帰モデルでは、潜在変数の間にある特定のパターンを検証できます。確証的因子分析では、潜在変数間の効果に方向を仮定しません(たとえば、すべての潜在変数の間に共分散を仮定します)。一方、構造回帰モデルでは、効果の方向を仮定します。たとえば、管理者にリーダーシップ(「Leadership」)があるほど、チーム内の葛藤(「Conflict」)が少なくなるとともに、職場での社員の満足度(「Satisfaction」)が高まるという仮説のもとでは、潜在変数の「Leadership」が、同じく潜在変数の「Conflict」や「Satisfaction」に影響するというモデルが考えられます。確証的因子分析を実行した後に、こうした方向のある効果(回帰)を指定するには、以下の手順に従います。

1. 起動ウィンドウで、モデルに含める顕在変数(観測変数)をすべて選択して[モデルの変数]をクリックし、[OK]をクリックします。

2. 「モデルの指定」レポートの「矢印の先」で、ある1つの潜在変数から影響していると仮定する、複数の顕在変数を選択します。

3. 「矢印の先」リストの下のボックスに、潜在変数に対する任意の名前を入力し、Image shown hereボタンをクリックして潜在変数を追加します。

4. この手順を繰り返し、モデルに含めるすべての潜在変数を指定します。

5. 「モデルの指定」レポートで、「矢印の元」から説明変数を、「矢印の先」からその説明変数に対応する応答変数を選択し、一方向の矢印ボタン(「→」のボタン)をクリックします。

潜在成長曲線モデル

潜在成長曲線(LGC; Latent Growth Curve)モデルは、反復測定データに対して、潜在的な軌道を仮定したモデルです。このモデルは、混合モデルにおける変量効果モデルと大変よく似ています。潜在成長曲線モデルでよく行うのは、成長率ゼロのモデルと、線形モデルを比較することです。成長率ゼロのモデルは、各個体に関して起点(ベースライン値)は異なっていても構いませんが、軌道は平坦になっています。一方、線形モデルは、各個体に関して、起点と、経過時間に対する傾きが両方とも、異なっています。さらに、データが十分にある場合は、これらのモデルを2次式モデル(各個体に関して、起点、経過時間に対する線形的変化、2乗の変化が異なるモデル)と比較することもできます。「構造方程式モデル」プラットフォームでは、自分で潜在成長曲線モデルを最初から指定することもできますが、モデルのショートカットを使用して以下のように簡単な操作で指定することもできます。

1. 起動ウィンドウで、モデルに含める顕在変数(反復測定された観測変数)をすべて選択して[モデルの変数]をクリックし、[OK]をクリックします。

メモ: 潜在成長曲線モデルに対するショートカットを使ってモデルを正しく指定するには、観測変数は一定間隔で測定されていなければいけません。また、時間順に並べておいてください。

2. [モデルのショートカット]オプションで[経時的データ分析]>[切片のみの潜在成長曲線]を選択し、[実行]をクリックします。

3. [モデルのショートカット]オプションで[経時的データ分析]>[1次の潜在成長曲線]を選択し、[実行]をクリックします。

4. [モデルのショートカット]オプションで[経時的データ分析]>[2次の潜在成長曲線]を選択し、[実行]をクリックします。

「モデルの比較」表に各モデルの適合度指標が表示され、それらの適合度指標をもとに最適なモデルを選択することができます。

条件付き潜在成長曲線モデル

条件付き潜在成長曲線モデル(Conditional Latent Growth Curve Model)は、上記の手順に従って、まずは、1次式や2次式などの適切な成長の軌道を選択します。その後、切片や傾きなどに対する説明変数を、モデルに加えることができます。それらの説明変数が、切片や傾きなどの潜在的なスコアを決める重要な要因かもしれません。条件付き潜在成長曲線モデルをあてはめるには、起動ウィンドウにおいて、反復測定された顕在変数、および、潜在変数に影響を与えているであろう顕在変数を選択します。なお、以下の手順を効率良く実行するには、[モデルの変数]のリストにおいて説明変数が一番下にくるようにしてください。

1. [モデルのショートカット]オプションを使って、適切と思われる成長の軌道を選択します。このオプションを使用すると、潜在成長曲線モデルでの反復測定を表す部分に説明変数も加えられてしまいます。そこで、反復測定データの部分からそれらの説明変数を除外して、説明変数として正しく指定する必要があります。

2. まず、「因子負荷」のリストから説明変数を見つけ、それらを含む効果をすべて選択し、[削除]をクリックします。

3. 次に、「矢印の元」でその説明変数を選択し、「矢印の先」で[切片]または[傾き]を選択します。

4. 一方向の矢印ボタン(「→」のボタン)をクリックします。これにより、条件付き潜在成長モデルが設定されました。

メモ: 説明変数が複数ある場合は、「矢印の元」と「矢印の先」でそれらの説明変数を選択して双方向の矢印ボタン(「←→」のボタン)をクリックし、説明変数間に共分散を設定してください。

多母集団分析

多母集団分析モデルとは、グループ(母集団)ごとに異なるパラメータをもつ構造方程式モデルです。母集団間で異なるパラメータをもつ構造方程式モデルを推定することで、異なるグループについての推測を行えます。多集団分析モデルは、次のようにして指定できます。

1. 起動ウィンドウで、モデル化したい観測変数を選択し、[モデルの変数]をクリックします。

2. カテゴリカルなグループ変数(通常は水準数が少ないもの)を選択し、[グループ]をクリックし、[OK]をクリックします。

3. 「モデルの指定」で、モデルを指定します。回帰のパスを追加するには、「矢印の元」から説明変数を、「矢印の先」からその説明変数に対応する応答変数を選択し、一方向の矢印ボタン Image shown here をクリックします。共分散のパスを追加するには、同じように変数を選択して、双方向の矢印ボタン Image shown here をクリックします。潜在変数を追加するには、「矢印の先」から指標変数を選択し、「矢印の先」の下にある追加ボタン Image shown here をクリックします。

4. [全体]タブのパス図で矢印を選択し、[等号制約の設定]をクリックすると、異なるグループのパラメータに等号制約(等値制約)を課すことができます。[全体]タブでモデルの指定に行った変更は、すべてのグループに適用されます。個々のグループに対する制約や、指定内容の変更は、該当するグループのタブを使って適用できます。デフォルトの多母集団分析モデルは、すべてのパラメータがグループごとに異なるモデル(つまり、グループ間のパラメータについて何の制約もないモデル)となっています。

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