[因果処置効果]手法の別例この例では、「モデルのあてはめ」プラットフォームで[因果処置効果]手法を使って、上司のリーダーシップが業務満足度に及ぼす効果を分析します。ここで、「上司のリーダーシップ」は連続変数となっています。従業員に対して、職場での満足度、葛藤、リーダーシップについて尋ねたアンケートの回答を分析に使用するものとします。「Leadership_Avg」変数は、各従業員が上司に満足しているかどうかを表す指標です。この例では、このスコアを連続的な処置変数とみなします。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Job Satisfaction.jmp」を開きます。
2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
3. 「列の選択」リストで「Satisfaction_Avg」(満足度)を選択し、[Y]をクリックします。
4. 「手法」のリストから[因果処置効果]を選択します。
5. 「列の選択」リストで「Leadership_Avg」(リーダーシップ)を選択し、[処置]をクリックします。
6. 「処置変数のモデル」タブを選択します。
7. 「Person_C」から「Inter_C」までを選択し、「追加」をクリックします。
図14.8 入力が完了した「モデルのあてはめ」起動ウィンドウと「処置変数のモデル」タブ
8. [実行]をクリックします。
「モデル 1」レポートに、2種類のモデリング手法の結果が表示されます。1つは、周辺構造モデル(MSM; marginal structural model)を比調整逆確率重み付け法(IPWR; inverse probability weighting with ratio adjustment)によって推定するものです。もう1つは、一般化傾向スコア法(GPS; generalized propensity score modeling)です。これらの2つのモデルは、自動的にあてはめられます。処置変数が連続変数の場合、傾向スコアは、与えられた共変量のもとでの条件付き密度です。どちらの手法でも、「処置変数のモデル」で指定された変数に基づき、同じ傾向スコアを推定しますが、その推定された傾向スコアを異なった方法でその後の計算に用います。周辺構造モデルのIPWR推定では、結果モデルを推定するのに、安定化された傾向スコアの逆数を重みとします。一方、一般化傾向スコアモデルでは、結果モデルを推定するのに、傾向スコアの関数を固定効果の説明変数に加えます。これらのモデリング手法の詳細については、[因果処置効果]手法の統計的詳細を参照してください。
9. 「因果処置効果のあてはめ」レポートの「モデルの設定」パネルで、「処置水準の最小値」を1に、「処置水準の最大値」を10に、「処置水準の増分」を1に設定して、[実行]をクリックします。
指定した処置水準の値に基づき、「モデル 2」レポートが表示されます。このレポートに注力するために、「モデル 1」レポートは削除しましょう。
10. 「モデル 1」の赤い三角ボタンのメニューをクリックして、[あてはめの削除]を選択します。
これで、「モデル 2」レポートのみが表示されるようになりました。「因果効果の分析」セクションの「一般化傾向スコアモデルの結果」の下に、「処理水準ごとの潜在結果の推定密度」プロットがFigure 14.9のように表示されます。処置変数(Leadership_Avg)の水準を縦軸として、一般化傾向スコアモデルから予測された潜在結果の分布が表示されます。処置水準が低いか、または高い場合は、潜在結果の分布が非常に細くなっていることがわかります。
図14.9 「処置水準ごとの潜在結果の推定密度」プロット
Figure 14.10の「処置変数のヒストグラム」を見ると、上司のリーダーシップに対する評価は、3.5から9までにおさまっていることがわかります。この区間の外に、裏付けとなるデータがないことが、処置水準が低い場合および高い場合に、潜在結果の予測値のばらつきが小さくなっている理由です。このモデルでは、処置水準が低い場合および高い場合に、外挿が行われています。つまり、調査から得られたデータには存在しない範囲を予測しています。
図14.10 「処置変数のヒストグラム」プロット(処置変数が連続変数の場合)
11. 「因果処置効果のあてはめ」の赤い三角ボタンをクリックし、[言葉による説明や解釈を表示]を選択します。
「正値性」の尾根プロット(Figure 14.11)を見ると、多くの密度曲線が、一般化傾向スコアが0の付近でピークに達しているか、密集していることがわかります。これは、この一般化傾向スコアモデルのもとでは、多くの場合、特定の処置水準を受ける傾向スコアの推定値が非常に低くなることを意味します。この現象は、処置変数が連続変数の例では一般的です。なぜなら、処置変数はどのような値でも取りうるからです。しかし、この例においては、正値性の仮定が満たされていない可能性があります。つまり、特定の処置水準を受ける確率が0になる共変量の組み合わせが存在する可能性があります。正値性の仮定が満たされない場合でも、有効な因果推論を維持するためには、処置変数の範囲を制限するか、処置変数を二値変数に変換することを検討してください。処置変数が連続変数の場合における正値性の仮定については、「正値性」プロットの下に詳細が表示されます。この詳細を表示するには、「因果処置効果のあてはめ」の赤い三角ボタンのメニューから、[言葉による説明や解釈を表示]を選択してください。
図14.11 一般化傾向スコアの尾根プロット
最後に、「因果効果の分析」セクションで、因果効果の推定値を計算します。計算方法の詳細については、因果効果の分析を参照してください。すべての従業員が、上司のリーダーシップに対して、5と評価した場合と、7と評価した場合で、業務満足度の平均値がどのように変化するかを調べたいとします。まず、周辺構造モデルの結果(Figure 14.12)に基づき、検討します。このモデリング手法では、この条件における平均処置効果(ATE; average treatment effect)は1.03になります。つまり、因果効果の仮定が適切なものになっているならば、リーダーシップの評価が5から7に変化すると、従業員アンケートにおける業務満足度が平均的には1.03増加すると結論付けられます。
図14.12 周辺構造モデルの結果
次に、一般化傾向スコアモデルの結果(Figure 14.13)に基づき、同じ問題を検討してみましょう。「処置水準ごとの潜在結果平均の推定値」の値を調べます。このモデリング手法では、平均処置効果(ATE)の推定値は、1.21になります。つまり、因果効果の仮定が適切なものになっているならば、リーダーシップの評価が5から7に変化すると、従業員アンケートにおける業務満足度が平均的には1.21増加すると結論付けられます。
図14.13 一般化傾向スコアモデルの結果